15時ちょうど頃、Apple Newsのライブアクティビティ選挙速報に「This data will stop updating(このデータの更新は停止されます)」というメッセージがポップアップし、その後、画面上部のダイナミックアイランドから選挙の得票数が消え、通常の状態に戻った。結果はすでに火を見るより明らかであり、ダイナミックアイランドにもはや選挙速報は必要なくなったのだ。
1973年1月22日、米連邦最高裁は7対2の多数で、合衆国憲法修正第14条に基づき、女性は基本的なプライバシー権を有しており、したがって女性の人工妊娠中絶の権利は憲法によって保障されるとの判決を下した。これが歴史的な意義を持つロー対ウェイド判決である。2022年6月24日、米連邦最高裁は、憲法は市民に中絶の権利を付与していないとの判決を下し、ロー対ウェイド判決は覆された。2024年11月6日、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件にも関与したアメリカの極右活動家ニコラス・ジョセフ・フエンテスは、中絶の権利を主張するスローガン「My body, my choice(私の身体は私のもの)」をもじって、「Your body, my choice. Forever.(お前の身体は俺のもの。永遠にな)」とX(旧Twitter)に投稿した。その後の数日間で、複数の女性がオフラインでこのような嫌がらせを受けたと報告している。
この言葉は以前、結びの言葉としてよく使っていたが、今回は冒頭に置くことにする。
11月5日、アメリカの大統領選挙当日。何億人もの有権者がこの日、自分たちの思い描くリーダーや国会議員を選ぶ。今日選ばれた当選者は、今後の4年間、世界中の多くの人々の生活に影響を与えることになる。
私はUTC+8(東八区)のタイムゾーンに住む人間だ。私には投票権がなく、これまで一度も投票権を持ったことがない。私は焦燥感に駆られながら、スマートフォンで何度も時計を開き、ニューヨークに朝が来たこと、そして投票所が開き、閉まり、開票が始まるのを確認していた。
選挙が始まる前から、不安の空気が濃く漂っていた。予想される暴力行為を危惧する人もいれば、アメリカの民主主義が存続できるかを危惧する人もいた。私はといえば、未来の行方を危惧していた。
率直に言って、私はハリスに勝ってほしかったし、民主党に勝ってほしかった。民主党の多くの怠慢を知らないわけではないが、だからといって、扇動を選挙手段にし、いくつもの罪に問われている人間が権力を握る理由にはならない。アメリカの現状における構造的ジレンマは周知の事実であり、望まない相手を当選させないためには、対抗できるもう一人の候補者に投票するしかないという現実も認めざるを得ない。つまり、このような政治の二極化がなければ、ハリスが勝つかどうかはどうでもよく、ただトランプが負ければそれでよかったのだ。一方で、ハリスが当選し、民主党が権力を維持できれば、ウクライナや台湾への支援、進歩主義的な政治といった多くの政策方針はおそらく維持されるだろう。未来に対する不安が尽きない私にとって、そうした確実性はせめてもの精神安定剤だった。なんと言っても私自身、マイノリティであり、クィア・フェミニストなのだから。
トランプが当選したときの結果について、これまで一度も考えたことがなかったことも認めざるを得ない。なぜなら、それが間違いなく最悪のシナリオだからだ。トランプの宥和的な態度は、ウクライナと台湾を非常に受け身の状況に追い込むだろう。権威主義的な政治がさらに多くの土地へと拡大していくのを喜んで見ていることなどできないし、万が一台湾が不利な状況に陥れば、ただでさえひどい経済と私が依存しているライフスタイルはさらに追い打ちをかけられることになる。社会の周縁に生きる私自身も、当然より不安定な状況に直面するだろう。さらに、トランプが当選すれば、女性やLGBTQ+の権利が損なわれ、右派が追い打ちをかけるように迫害してくることはほぼ確実だ。そんな状況も到底喜べない。現在のアメリカが「灯台」を名乗る資格などないことは重々承知しているが、それでもアメリカが世界の政治のバロメーターであることに変わりはない。それが何を意味するのかは、言うまでもないだろう。ただでさえギリギリの私の精神状態を保つためには、この百鬼夜行のような地獄絵図を予想しないのが一番だった。
この日私が眠りについた時、大部分の州で投票は始まっていたが、開票はまだ先のことだった。翌朝目が覚めると、トランプはすでに101人の選挙人を獲得し、ハリスはその半分にとどまっていた。この時、UTC+8の午前9時半、アメリカ東部時間の午後8時半。激しい開票作業がすでに始まっていた。東西で開票時間にズレがあるため、現時点での大幅な後れは正常な現象であり、西海岸の開票が始まればハリスが劣勢を跳ね返し、トランプを逆転する見込みは十分にある。少なくとも、私自身はそう期待していた。
家を出てから昼に帰宅するまで、私はほとんどスマートフォンから目を離さなかった。画面上部のダイナミックアイランドに表示されるApple Newsの開票速報、画面中央のGoogle検索によるリアルタイムの開票結果、各メディアの現地報道、SNSでのアメリカの有権者の世論、そしてテレビではNHKとAbemaを交互に切り替える。私の脳はあちこちからの情報に洗われ続け、休むことなく高速で反応を繰り返し、気がついた時には精神状態が一触即発の限界に近づいていた。先日観たばかりの映画『インサイド・ヘッド2(原題: Inside Out)』を思い出し、私の脳内では「シンパイ」が光速に近いスピードで駆け回っていて、他の感情が主導権を握る隙など全くないことに気づいた。この時の私には、身の回りのことなど気にかける余裕は微塵もなかった。
UTC+8の正午12時、アメリカ西海岸時間の午後8時。AP通信はハリスがカリフォルニア州の選挙人54人を獲得したと即座に報じた。この時点でハリスの獲得選挙人は179人、トランプは214人となった。私の心に一縷の希望が芽生え始めた。西海岸が開票に入り、選挙人の獲得数の差は縮まりつつある。この先の激戦州で優勢に立てば、ハリスが選挙に勝つチャンスはある。
20分後、最初の激戦州であるノースカロライナ州で、トランプが選挙人16人を獲得したと報じられた。
これは極めて危険な兆候だった。しかも、北部の各州とほぼすべての激戦州でトランプの得票が優勢に立っていた。ざっと計算してみると、トランプの勝利はほぼ確実であることに気づかされた。
私は沈黙し、一言も発することができなかった。しかし、最終結果はまだ確定していない。これから何が起こるかは誰にも分からない。十数秒ほど呆然とした後、私は再び選挙速報を追い続けた。
ジョージア、ジョージア……ペンシルベニア、ペンシルベニア……この2つの州さえ死守できれば、もしかしたら局面を覆せるかもしれない。
時を同じくして、中国の株式市場では奇妙な現象が起きていた。「川大智勝」の株が急騰し、「哈爾斯(ハーズ)」の株が下落していたのだ。これは単なる社名と両候補者の名前の偶然の一致に過ぎないが、株式市場の反応を表していた。つまり、中国の個人投資家たちは軒並みトランプの当選を有力視していたということだ。みんなは、A株のテーマ株こそが中国人にとってのPolymarket(アメリカのブロックチェーン基盤の予測市場サイト)だと笑い草にしていた。一方、Polymarketにおける今回の大統領選の賭けでは、ハリス勝利のオッズが非常に恐ろしい水準に達していた。
1時間後、UTC+8の午後1時26分、黄旭東(eスポーツの実況者)がWeiboに「どうやらトランプが勝ったようだ」と投稿した。ある意味で、彼がこの言葉を発した時、選挙戦の情勢も転換点を迎えたのかもしれなかった。プロのゲーム実況者である黄旭東の予想は、ほとんどすべてが逆の方向に進むため、「毒奶(逆神)」と呼ばれている。少なくとも私は、彼の今回の予想が本当に大統領選に影響を与えてくれることを願っていた。
20数分後、UTC+8の午後1時46分、NHKの開票速報がトランプによる激戦州ジョージア州の選挙人16人の獲得を報じた。AP通信がこの結果を発表したのはその13分後だった。この時点でトランプの獲得選挙人は246人に達し、ハリスは214人だった。ハリスとトランプの票差が縮まり続けていたとはいえ、トランプの勝利はすでに目の前に迫っていた。
その後数分のうちに2つの知らせが入った。1つはA株の「川大智勝」がストップ高になったこと、もう1つは黄旭東が前述のWeiboの投稿を削除したことだった。
すべての情報が同じ結果を示していた。私の部屋は沈黙に包まれていた。今この瞬間、海の向こうにあるハリスの母校・ハワード大学の選挙の夜の会場と同じように。
午後2時19分(ここから先、特に断りがない限り時間はUTC+8を基準とする)、AP通信はハリスがニューハンプシャー州の選挙人4人を獲得したと判定した。これで計214人。
15時ちょうど頃、Apple Newsのライブアクティビティ選挙速報に「This data will stop updating(このデータの更新は停止されます)」というメッセージがポップアップし、その後、画面上部のダイナミックアイランドから選挙の得票数が消え、通常の状態に戻った。結果はすでに火を見るより明らかであり、ダイナミックアイランドにもはや選挙速報は必要なくなったのだ。
15時07分、NBCはトランプが激戦州のペンシルベニア州で選挙人19人を獲得したと判定し、AP通信も15時26分にこの結果を発表した。この時点でトランプの獲得選挙人は267人に達し、あと最低3票獲得すれば当選ラインの270人に到達する。一方、ハリスのチャンスはすでに絶望的な状況だった。
15時49分、AP通信はハリスがミネソタ州の選挙人10人を獲得したと判定。計224人。
11分後、アメリカ東部時間午前2時半、フロリダ州のマー・ア・ラゴにてトランプが自ら勝利を宣言し、勝利演説を行った。これに先立ち、Foxニュースはすでにトランプの勝利を予測していた。この時、中国の主要な動画配信プラットフォームでは、楽曲「Y.M.C.A.」のコメント欄が「MAGA」で埋め尽くされていた。
空気中の重圧が喉を塞ぎ、腰を真っ直ぐに伸ばすことすらできなかった。私は未だにAP通信の結果を待ち続けていた。もしかすると、まだ奇跡が起こることを期待していたのかもしれない。しかし、その待ち時間はあまりにも長すぎた。
数時間後の18時37分、AP通信はトランプが激戦州のウィスコンシン州で選挙人10人を獲得したと発表し、この時点で計277人の選挙人を獲得した。さらに、共和党は上院の過半数を奪還し、下院でも圧倒的な優位に立っていた。トランプは当選した。トランプは負けなかった。トランプは間もなく三権を掌握することになる。
夜8時半、私は外へ出て、下の階にあるコンビニでグレープフルーツジュースを1本買った。
夜9時半、グレープフルーツジュースで咳止め錠を一つかみ飲み込んだ。
2時間以上経っても薬が効いてこなかったので、さらに一つかみ追加した。
午前1時、薬が効き始めた。私はすぐにツイートした。
正確に言えば、彼らが勝ったからといって私たちが負けたわけではない。しかしさらに正確に言えば、彼らの勝利はすなわち私たちの敗北なのだ。
午前2時半、私は感情も精神もひどく混乱した状態で、グループチャットで発言した。
これまで何度か選挙を経験してきたが、自分が当選してほしいと思った人が勝てなかったのは今回が初めてだ。そして、相手を負かしたいがためだけに、ある候補者の当選を願ったのも初めてだった。
十数分後、オランダに留学している友人と通話した。薬の効き目が強すぎて、その夜の通話で何を話したかほとんど思い出せない。彼女は向こうでの学業を続けられるかどうかひどく心配している様子だった。あとは、彼女の彼氏が私を直視できずにいたことくらいだ。カメラに映る私の有様が、あまりにも言葉を失うような状態だったからだ。
午前4時半、カナダにいる別の友人と。数時間前に送ったメッセージにようやく彼女から返信が来たので、そのままの成り行きで通話した。
午前5時半、アメリカ東部時間午後4時半。ハワード大学でハリスが敗北演説を始めた。私は見なかった。見るに忍びなかったからではなく、眠りに落ちそうだったからだ。
これが2024年のアメリカ選挙の夜、この一晩に起こったすべての出来事だ。
翌日の午後、いつもの心理カウンセリング。
しかし、人々はこれまでずっとそうやってダチョウのように現実逃避してきた。果たしてそれでいいのだろうか?
1973年1月22日、米連邦最高裁は7対2の多数で、合衆国憲法修正第14条に基づき、女性は基本的なプライバシー権を有しており、したがって女性の人工妊娠中絶の権利は憲法によって保障されるとの判決を下した。これが歴史的な意義を持つロー対ウェイド判決である。2022年6月24日、米連邦最高裁は、憲法は市民に中絶の権利を付与していないとの判決を下し、ロー対ウェイド判決は覆された。2024年11月6日、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件にも関与したアメリカの極右活動家ニコラス・ジョセフ・フエンテスは、中絶の権利を主張するスローガン「My body, my choice(私の身体は私のもの)」をもじって、「Your body, my choice. Forever.(お前の身体は俺のもの。永遠にな)」とX(旧Twitter)に投稿した。その後の数日間で、複数の女性がオフラインでこのような嫌がらせを受けたと報告している。
1969年6月28日、ニューヨーク市のストーンウォール・インでストーンウォールの反乱が起きた。その先駆者の中には2人のマイノリティのトランスジェンダーがいた。2024年11月7日当日、英語圏のTwitterユーザーの間でトランスジェンダーの自殺事件が多数報告され、複数のインフルエンサーがアメリカのトランスジェンダー向け命の電話の番号を投稿した。
1943年12月17日、マグヌソン法が可決され、中国人排斥法が廃止されたことで、中国人の入国、移民、帰化が認められた。2011年、米上院は中国人排斥法について正式に謝罪した。2024年11月8日、NBCの報道によると、トランプの移民追放計画によって最初に打撃を受けるのは、兵役年齢に達した中国籍の男性不法移民になる可能性があるという。近年、中国本土では、こうした人々やその他の中国系移民に対して「バナナ人(外見は黄色いが中身は白いという意味)」という差別的な呼称が使われるようになっている。
11月8日当日、現職のバイデン大統領はトランプの当選を祝うツイートを投稿した。
最後の「That’s what the American people deserve.」という一文は、「アメリカ人の自業自得だ」と解釈することもできる。
トランプの当選から数日の間、このニュースは中国語インターネット上のトップニュースとなった。中国語圏のネット上では、フェミニスト、LGBTQ+、マイノリティ(そう、当然中国系も含まれる)に対する普遍的な憎悪を背景に、トランプの当選はリベラル派から権威主義派に至るまで、政治的スタンスを超えて多くの人々に歓迎された。小紅書(RED)などのSNSプラットフォームでは、今回の大統領選後の政治的鬱病などについて論じた女性によるコンテンツが、コメント欄でネットいじめに遭うケースが多発した。彼女たちは「子なしの猫好き女」(今回当選したJ.D.ヴァンス副大統領の発言に影響されたもの)などと呼ばれ、さらには男性至上主義的なコミュニティ「孫笑川吧」や関連人物のアカウントに転載されて攻撃され続けた。同時に、こうした政治的鬱病について論じたコンテンツの多くは削除された。
現時点(11月13日 UTC+8 16時20分)で、トランプは計312人の選挙人と約7,600万票の一般票を獲得し、ハリスは計225人の選挙人と約7,200万票の一般票を獲得している。共和党は上院で計53議席、下院で216議席を獲得し、民主党は上院で計43議席、下院で207議席を獲得した。開票作業はまだ完全には終わっていない。
この記事を書き始めたのは、ちょうど北半球の立冬の頃だった。いずれにせよ、厳しい冬はもう到来している。
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